実録!! 探偵日記




実録探偵日記       其の二

 前回は、私に取って「依頼者の幸せが一番嬉しい。」などと、もっとも

らしい事を書いたので、もっとシリアスな部分も書いておこう。

 私の浮気調査の遂行上 一番の障害と成り得る人は、被調査人でも、

その相手でもよく職務質問してくる警察官でもない。

何を隠そう 依頼者その人である。

 では、どういった依頼者が障害となり得るかと言うと、平常心を全くなくした依頼者である。

おおよその依頼者は夜も眠れずに大なり小なり冷静ではない。

しかし、極端に動揺した毎日を送っている依頼者はとにかく やりにくい。

調査を開始する前に、事前に話を聞くのだが、いう事は支離滅裂、

うっ積した不満を全て私にぶつけてくる。

 何処が事実で、どこからが想像なのかよく解らない。

そういった時は、一つ一つ「そう言う事があったのですね。」「そう思われた

わけですね。」と事実と想像を区分けしながら時間をかけて現状を把握する。

 それでも日頃 亭主に「あなたうわきしているんでしょ!」と問いつめ続け

「頭がおかしいんじゃないか?」「被害妄想だ!」などと言われ続けてている

人の中には、自分の話している内容を信じて欲しいが為の「ウソ」をつけ加える人がいる。

 「下着に女性の頭髪がついていた」「女を部屋にいれて布団に二人で寝てた」

「女に子供を生ませている」・・・・・・・・・

「そこまで解っていれば調べる必要はないじゃないですか。」・・・・・・

と言いたくなるが、そこでまた冷静に話を聞く「布団に入っているのを見たんですね。」

・・・・「近所の奥さんが見たと言っていました。」

どう考えても隣の奥さんは布団の中までは見えない。

 それ以上追求すると よけいパニックになるので話を替えると言った具合である。

実際、依頼者の話で調査の参考になるのは1割である、後は一つ一つ自分の目と

足で調べあげる。

 では何のために依頼者の話を丁寧に聞くか と言うと依頼者に落ちついてもらうためである。

そういう依頼者は自分自身の心のなかで現実と想像の区別がついていないので、

それを整理してあげる必要がある。

さもないと、もし、被調査人の浮気の事実がなく被害妄想だった場合、

その「猜疑心」の矛先は私に向かって来るのである。

「調べもしないで嘘の報告をした」必ずそう言ってくる。

 ひどい場合は調査途中で被調査人に「あなたには探偵がつけてあるからね!」

「もう全部分かっているんだからね!」などと言ってしまう依頼者さえいる。

 調査は一つ一つの事実を根気よく積み上げれば必ず真実はわかる。

一番大切なのは、依頼者に落ちついた状況のなかで事実を認識してもらい、

良好な関係を保つ事である。

 そのためには依頼者の心理状況を的確に把握し適切な距離で接する必要があるのである。

 だから私は調査の参考にならない話でも、時間をかけて聞くのである。





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