人の悩みは様々で、他人から見て実に下らない事でも当人にして見れば食事も
のどを通らず夜も眠れないほど深刻な事であったりする。
以下に書く事例はクライアントのプライバシーに抵触する可能性があるので
職業 名前などは変えて表現する、よくテレビドラマである「この作品はフィクションであり実在の団体、
個人とは一切関係ありません。」と言うやつである。
電話のベルは日曜の朝6時に鳴った、この時間に電話をかけてくるのは仕事が
終わって部屋に帰ったものの、なかなか寝付けないでいる知り合いのホステス位のものである。
大方まだ酔いが抜けておらず、やたら明るいか彼氏の愚痴を聞かされるかのどちらかである。
いずれにしても迷惑な電話だが、女性に弱いのは私も例外ではない。
電話に出てみると期待と不安を裏切り男からであった。
おどおどとして不安げな声の男はある女性の住所を調べてほしいというのである。
とにかく口ごもりがちで、いってることがはっきりしないので実際に会ってみることにした。
私の事務所兼ねぐらは限りなく散らかっており、また多くの人のプライバシーが置いてあるので
人を入れることはない。10時に近くの喫茶店を指定して電話を切った。
五分前にそこに行くとその男は既に着てコーヒーを飲んでいた。
一見してその男がクライアントだとわかった。
背が低く痩せて童顔の見るからに真面目で気の弱そうな男は不安そうに店の中を見回していた。
私が探偵であることを告げると少し驚いたようだった。
とりあえず話を聞くことにする。
男の名前は松田忠彦(仮名)36歳独身、公務員と言うことである。
探してほしい女性は鹿児島市の天文館と言う盛り場のあるスナックにいたホステスで
忘年会の三次会で知り合い、その後その店に4回ほど通い映画をにる約束をしてくれたが
最近になって店をやめて連絡がとれなくなったのでもう一度会って映画を観に行きたいと言うのである。
実に幼稚な話に思えるが当の本人にして見れば大きな問題である。
しかし私のポリシーとして調査が本人のためにならないと判断すればその仕事は受けない。
お節介を承知で「もし家を調べてそこに行っても相手は怖がるだけですよ、100%嫌われます。」
と言うと「どうしても会いたいんです。」と言う。
「お金は払いますからどうしても調べてください。いくらで調べてもらえますか・・・・・」
さて困ったものだ、「では彼女について分かっていることを教えてください。」
「年齢は28歳で名前が店では めぐみと言ってました、いた店はナイトイン美佐子と言う店です。」
「それだけですか?」「そう言えば吉野に住んでいると言うことでした。」
「できれば店に分からないように調べてください。」
また困った手がかりが少なすぎる、いくら掛かるのか分からない。
「35万円かかりますよ。それだけのお金を使って探す価値のある人ですか?」
「是非お願いします。」「彼女は私のことを好きなタイプだと言ってました。」
完全に営業トークを真に受けている。
「待ってください、まだ仕事を受けるとは言ってません、さっきも言ったようにいきなり家に行っても
嫌われますよ、きっと店を変わったんでしょうからそこを探すというのはどうですか?」
「それかもし夜をやめていたら彼女がよく遊びに行くところを探してそこで偶然を装って会った方が
よいと思いますそれならお受けしますどうですか?」
「それで結構ですお願いします。」
35万円払ってももう一度会いたい女性とはどんな人だろうと思いながら
この仕事を受けることにした。
・・・・・・つづく・・・・・・・